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2018.06.27 時には...
こういう畳がなくてはと思います。

先先代と親しくされていたお宅の畳を
表替えさせて頂く事になりました。
畳床は60年以上は前のもの。
何度か修繕時の口ゴザが入っていますが、
それでも縁際が沈んでいます。
しかし昔の職人さんは、ちゃんと口ゴザを入れています。

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畳の仕事を始めた頃は、こういう畳を見ると
「面倒だなぁ、新畳の仕事がしたい」と感じました。
しかし最近の建材畳床に中国産の畳表を付ける新畳など、
誰が作ってもほぼ同じものができます。
技術的にはパートの方でも十分間に合います。
だから機械を導入して、異業種がビジネスとして参入して来る。
しかしこういう古い畳になると、それなりの経験がないと
どこをどうやって修繕するのか
分からないと思います。

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自分が最初面倒くさいと感じただけに、
こらからの若い畳店の方にも
「物が蘇る素晴らしさ」
そして
「古き良きものへのリスペクト」

これを継承していってもらいたいものです。

そんな事を言うのはまだ早い!ですかねー
何と言っても「人生100年時代」ですから。

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先日、備後畳表の産地である広島県福山市に行ってきました。

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唯一の手織中継表の生産者である来山淳平さんの元へ。
昨年8月にもお伺いさせて頂いたのですが、
今回は足踏式オモテバタで中継表を織らせてもらうためです。

下は「コテ」と呼ばれる要の部品。
この木が少しだけ前後に傾くと、溝の部分に通された麻糸は
まっすぐのままですが、穴に通された縦麻糸は傾きその隙間に
左右からイグサを引っ掛ける薄い木が通る仕組みです。

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この手織り織機は来山さんのほぼ自作品。
よく見るとDIY感がプンプン。
勿論壊れた時も自分で修理されます。
昔の人が作ったと思いますが、実に上手く考えてあります。
私も機械好きなので、しばしそのメカばかり見ていました。

イグサを通す度に荷重のかかった両足の足踏みをします。
一枚完成するのはもうダイエット運動の域です。
慣れてくると両手・両足が連動してきました。
織手がいなければ助っ人はできると思います。
大変勉強になりました。

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そして廣川さんの工房も訪ねました。
ここに来るのは6年ぶり。
奥様は足も良くなられたご様子、お元気でした。
イグサの植付けもご一緒しました。

「ゴザを上手く撮って頂いたあの写真覚えてます?」
と言われました。

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11年前に差し上げた写真は今でも工房に掛かっています。
ちょっと恥ずかしいような、でも嬉しいですねー。

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当時私が考えた廣川さんのキャッチコピーは
The last successor of the weaving for Bingo-mat.
「備後表最後の継承者」


複雑な気持ちもありますが、
必ずや継承者が出てきてくれると思います。
歴史のある備後産地を存続させる働きを
行政に訴えて行く必要性を感じます。

頑張れ!備後産地。

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これはお世話になっている
あるご住職からお聞きした話です。
今から30年ほど前に書院と庫裏を新築され、
先代が備後表の長引で畳を作らせて頂きました。

すぐに台風が来たのですが、建物の設計ミスで
雨水が大量に部屋に流れてきたそうです。
もちろん総畳敷きですから、
入り口に近い畳の上は川のように
水が流れていたそうです。

慌てて先代に電話をされて事情を説明。
ところが父の対応は
「水だけ拭いてもらって、そのまま何もしなくて良いです。」
???
ご住職もあっけに取られたそうです。
納入したばかりの高価な畳が浸水したとなれば
普通なら飛んで行かなければダメでしょう。

その畳は今も書院で綺麗な金色(こんじき色)。
濡れなかった奥の畳と何ら変わりなく
敷かれています。
「石河さんのお父さんの言われた通りだった」
と、その部屋に入ると懐かしそうに話されます。

最初は半信半疑でしたが
何より実際にその畳が今も敷かれています。
ご住職の寛容な心と、
頑強な備後表を熟知し微動だにしなかった父を
まざまざと思い起こされました。
今の私はこの時の父とほぼ同じ年齢ですが、
悔しいかな、レベルが違います。

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前置きが長くなりましたが
今日、ヘビーユーザー様から同じ案件のお電話。
築100年以上のお屋敷。
気づくと雨漏りで壁土が泥になって
畳に付いて縁を腐らせてしまったとの事。
畳はやはり父が30年ほど前に施工した備後長引。

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汚れを取って見ると.....

麻縁と藁の一部は腐敗してますが、
麻2本芯の畳表はやはり何ともなっていない。
華奢な本高宮の麻縁を交換して納品しました。
これで30年経ってます、今でもパンパン。
まだ5年や10年へっちゃらです。

「せとなみ」という藺草で織られた
備後長引表に優る畳表はないと
私がずっと言い続けている理由です。
25〜30年使った備後長引表をいくつも
保管している変わり者は私ぐらいでしょう。
熊本の橋口さんに広島の表を見せて
「こういう畳表を織ってよ!」
こんなタブーな畳店はいないと思います。
私にとって彼はレジェンドでも何でもなく
同級のライバルですから。。。

何とかこの「せとなみ」が
再び復活する手立ては無いものか?
来月は備後地草の植え付けを手伝うため
福山に行って来ます。
廣川さんの奥さんや来山さんにも
色々とご指導が頂けるようなので
将来中継表の製織の手伝いができるように
勉強してきます。

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向かいにある武者小路千家官休庵の稽古場ですが、
ようやく一階が片付き、畳を新調させて頂きました。

茶会で懐石や寄り付きなどに使われますが、
やはり畳の余間は必要ですね。

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そういえば先週行われた熊本の畳表の品評会で
橋口英明さんが農林水産大臣賞に輝きました。
4度目の日本一というのは前人未到。
本当に素晴らしいです。

橋口さんとは同い年。
今から10年ほど前に知り合い、店にも2回来てくれました。
話すと謙虚で絶対自慢をしない人。
しかし「努力する」ということに対しては
常に強い志を持ち続ける事ができる人なんです。
私には到底できません。

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(2012.9月 石河製畳店にて)

最近は多くの畳店さんが熊本の品評会に行かれますが、
橋口英明の本当の良さを分かる人は少ないと思います。

最上級品(1番草)だけではなく、普及品の8番まで
しかも10年使ってきて初めて分かった事が幾つもあります。
例えば草質そして畳表の品質が全く変わりません。
イグサという多大な自然の影響を受ける農産物から
こちらのイメージ通りの畳表を毎年作る事が出来る人
それが橋口英明だと思います。

数日前に電話で話しましたが、
はるか遠い存在になられてしまいました。
しかし私にとって彼はずっとライバルです!!
どこまでも追っかけさせて頂きます。

受賞おめでとうございました。

九拝

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畳表: 熊本県産ひのみどり4番草(生産者: 橋口英明)
畳縁: 純綿双糸黒
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畳縁というよりも反物の生地です。
一番高価な畳縁、本当に高いです。
畳店ですらお客様の畳でまず見る事はない縁。

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しかしなかなか厄介な素材である事を
今回は嫌と言う程思い知らされました。

先代は以前かなりの頻度で使っており、
外した古い麻縁が今でも山のように保管してあります。
それを使って「手当て」を作る事を教えられました。
先代は包丁で割く時に、麻糸2〜3本程度の誤差で
いとも簡単に「シャーッ」と割いてました。
それを今でも鮮明に覚えていて、
その時は何度もやらせてもらえませんでしたので
今度やる時は勝負!と、心に決めていました。

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しかし包丁がちゃんと研げてないのか
真っ直ぐ割けません。
ハサミで切るなんて事は選択肢に無く
とにかくシャーッと割く事だけ。
色々と考え、ちょっとだけインチキを試みました。

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生地は縦の麻糸が細く、簡単に隣に脱線します。
切れすぎもダメ、とてつもなく脱線。
脱線しても脱線した感覚が無いから困ったもんです。
やはり麻糸にぶつかる感覚が手元にないと
うまく行かない事が分かりました。

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包丁を研ぎ直しました。
何しろ失敗すると洒落になりません。
しかし割く時は臆する事なく一気に
引かなければならず、相当なプレッシャー。
50回ほど割きましたが、途中から感覚が分かってきて
5〜6本程度の誤差に収まってきました。
しかし先代には完敗でした。

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縦方向にはかなり伸びます。
普通に縁を付けると繊維が歪んでしまうので
これを少しずつ丹念に修正。
まー本当に手間がかかります。

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先代が割いた時の「シャーッ」という音だけが
私の教科書でした。
藍染してあるので、数回割くだけで両手が真っ青に。


しかし手間をかけて作った畳を実際に敷いてみると
やはり何とも言えない味わいがあります。

素晴らしいです。

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