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今月はひたすらに手強いワラ畳を作っていますが、
その素晴らしさ・難しさ・凄さを再認識しています。
手間をかけて製作する作業を少しだけご紹介します。

畳製作には昔から一スミ、二カネ、三カマチという言葉があります。
框部分の製作は極めて重要なパートです。
自分的には、この框の作業が1番重要ではないかと思っています。

ワラ床は播州産。
古くから京都などの寺院で使われている歴史があります。

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その中でも最高級とされる棕梠(しゅろ)裏です。
棕櫚の木の幹の皮が裏側に縫われています。
縫糸間隔は6分。しっかりと藁が圧縮された一級床です。

はじめに頭板を縫い付けます。この時に使うのが「手あて」です。

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当店では代々、畳から外した麻縁を使って作ります。
麻なのですぐにボロボロにはなりますが、
当たりが柔らかくて針頭が滑らず最適です。



厚く固い部分は、針の通りを良くするために油を漬けます。

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足締めする前に畳床を熟し柔らかくします。



縫い糸を引っ張りながらかかとで締めます。
厚みを均一にするため中心部分は少しキツめに締めます。



畳床の下ごしらえが終わると、畳表を張ります。
最高級の畳表はイグサの打ち込みが多く、分厚い絨毯の様です。
これを畳床の腰を折って張力をかけ、パンパンに張ります。

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普通の畳で使用するような端止剤では抜けてしまうので、
縦糸(麻芯4本)を一山ずつ、糸で結んで止めて行きます。
「かがりどめ」です。



私は不器用なので早くは出来ませんが、
それよりも一回一回をキツくしっかりと引っ張るようにしています。
右手の指の側面に糸が食い込むので、必ずテーピングします。
さらに抜けにくくするために、縦糸に掛ける2回目の輪が
1回目の結び目の奥に入るよう心掛けます。
畳の框に縫い付ける時、縫い糸でイグサが切れる事はありますが、
この「かがりどめ」の糸で踏み留まります。
60箇所以上のコマ結びによる総摩擦力はかなりの力となるわけです。

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頭板の段差を是正するために、イガラを乗せます。
この藺がらは、備後中継表のヒゲを毟ったイグサの先部分。
中継表のヒゲに拘る理由は、柔らかくてコシがあるからです。

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これでやっと畳表を張ります。

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藺がらを入れて頭板との段差を是正した断面です。
この後さらに刺し藺を加えて、表面の段差の違和感をなくします。

ここまでだけでも作業を文章にするのは大変!ですが、
次回は畳縁を紹介したいと思います。

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「この部屋の畳です」
と案内された部屋の畳を見て、喉元まで
「このままお使いください」と出そうになりました。

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私の店には古くから畳の事をお任せ頂いている何軒かの
ヘビーユーザーのお客様がいらっしゃいます。
中でも個人の住居で70帖近い畳がすべて
中継ぎ表と本高宮麻縁仕様などという事は、
全国でも数軒あるかなしかだと思います。
しかも人間国宝であった寺岡文子さんの手織り中継ぎ表。
30年は経過していますが、今や工芸品の域に入る最高級の畳だからです。

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始めた頃は、こういう畳は先代がやってくれるものと
ずっと思っていました。
しかし先代が亡くなってからここに1人呼ばれた時は
不安で不安で大変だった記憶があります。

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水屋でさえも中継ぎ。

同じ畳の仕事をしていても、おそらく出会う事がない人の方が多い。
流行のカラフルな和紙畳を多く作る畳屋さんもいれば
最新の機械で1日に数多くの畳を仕上げる畳屋さんもいます。
温故知新、現代に沿った新しい畳を開発する畳屋さんもいます。
しかし私の場合は、こういう畳と向き合わなくてはならない境遇にいます。
でも、こんな畳を作るために自分は畳の道を選んだのではないか、
最近そう思うようになりました。
少し仕事ができるようになったつもりでも、全国の畳職人さんと話していると
その知識や技に何度もカルチャーショックを受ける繰り返し。
恥も沢山かきました。
しかし気持ちさえあれば、段々とそれらしくなってくるものです。
おそらく畳製作の全てのパートの、ここはこうでなければダメ、
という「基準」が分かってきたからだと思います。
そしてその基準をクリアするための技、裏技。
それを実践の場で試す事ができたのもお客様のおかげです。
練習と実際の施工とでは、プレッシャーが全く違います。

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この手織り中継表のイグサを供給していたのが廣川さんでした。
廣川さんが亡くなられる前の3年間に、何度か広島に行き、
話をさせて頂くことができました。
3年通って、やっと名前を覚えて頂けました。
日本一の備後畳表を製織していた廣川さんに会わないと始まらない。

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(故廣川広志氏の工場にて 2006.10月)

勝手にそう思い、あの時はただ闇雲に備後産地を尋ねましたが、
いつの日か、材料から選ばなければならない難しい仕事を
先代のように自分で物の良し悪しを見極めて、
お客様を納得させられるような仕事をしてみたい。
帰りの新幹線の中でそう思った事を鮮明に覚えています。
ある日、廣川さんから京都御所の畳工事で使われた
機械織りの中継ぎ表が送られてきました。
予備の一枚でしたが、「あんたにあげる」と言われた時は
本当に胸が熱くなったのを覚えています。
その後お茶を始め、今は毎週その中継表の畳の上で稽古をしています。
奇遇としか言いようがありません。

今からでも畳の修行に行きたいと思う未熟な自分ではありますが、
実際にこういう畳を任されて仕事をしている事自体、
その時の夢が叶っているのかもしれません。

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今月は、他の仕事は一切しないでこのお客様の畳を作っています。
使う全てが超一級の素材。
えらくてシンドくて体が悲鳴をあげていますが、
還暦前の禊(みそぎ)と思って頑張ります。
こういう縁を残してくれた先代に本当に感謝です。
そして何よりも、
貴重な経験を積ませて頂ける仕事をご依頼頂きましたお客様、
ありがとうございます。

2020.02.25 框板
上物のワラ畳を製作する時に、框(畳の短手の方)に
頭板と呼ばれる細長い板を縫い付けて固く締め付けます。
数年前に木工屋さんで一生使えるほどの板を作って頂きました。
素人の推測では、断面を斜めに切断しているようです。

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頭板の入った畳は永きに亘って角崩れがおきません。
私も過去に京都の寺院で江戸時代の古い手床に中継表という
パンパンの畳表を使って表替え作業をさせて頂きましたが、
未だ現役で敷かれています。この頭板がなければ畳床が持ち堪えられません。
新しく畳を製作する際にも、切断した所のワラが膨らまず、
踏んだ表面の足裏感覚が一定し、なるほどと思います。

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ただ一つ困っている事は、この板が少し厚過ぎるので、
現代の機械で作られた固いワラの一級床に縫い付けて
例え強く締めても、板の厚み分の段差は少し沈む程度です。
しかし薄い方を最低この位の厚みにしないと、切断の際に
板が割れてしまうのだと推測します。

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少しならカンナで削るのですが、五厘(1.5ミリ)となると
木目もあり、しかも50枚近くも素人の私には無理。
そこで知り合いのプロにお願いして削ってもらいました。
プロ曰く、機械でも割れずに削るのは難しかったそうです。
下のように良い感じに仕上がりましたが、

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板には「反り」があるので、今度は側面の直線性も確認。
まあまあ、ほとんど反っています。
また、板には20ほどの穴を開けて縫い付けますので、
片側が縫い糸の往復で40回、1畳では80回。
20帖なら1600回も固い床に針を刺す事になります。
しかし上級畳の製作は、このような下ごしらえから始まるのです。

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2018.11.24 『風行草偃』
臨済宗妙心寺派の修行道場瑞龍寺本堂の畳。

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ここに来ると養老町出身の土屋禮一画伯の龍の襖絵が迫り、
いつも「己の心」が揺さぶられるような、、、
ちょっと大袈裟ですが、そんな厳粛な気持ちになります。

雲水さんたちが毎日禅の修行に明け暮れる僧堂は
畳の真価が問われるフィールドでもあります。
部屋の中でも比較的使用頻度の少ない場所に
自分では正直耐久力に確証がなかったのですが、
とある品種の畳表の最上品を使用したのが9年前でした。

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左側は裏返し、右側が品質を吟味して表替えした畳。
年数の違いはあれ、同じ国産畳表でもこれだけ違います。

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表面が光っているように見えますが、これは人の皮脂等で
いわば表面がコーティングされた状態になっているのです。
い草のささくれもほとんど無く衣類に着きません。
乾燥度の高い中国産い草や、表皮の薄い国産い草ですらも
このように光沢が出るまでに、表皮が持たず削れてしまいます。
色は別にしても、裏側も同じ年数の耐久力があります。

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畳表は決して品評会で見てくれを鑑賞するものではありません。
畳として製品となり、何年も人に踏まれて使われるものです。
「国産の畳表だからささくれません」等、一体何を根拠に
お客様に説明できるのか? という自分の率直な疑問でした。
ある生産者の畳表に課した、一つの答えだと思います。

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書家でもあられます、清田保南老師とお話ししていると
素晴らしい頂き物をしました。
『風行草偃』(ふうこうそうえん)とは、"風吹かば、草ふせる"

ありがとうございました。
九拝

2018.06.27 時には...
こういう畳がなくてはと思います。

先先代と親しくされていたお宅の畳を
表替えさせて頂く事になりました。
畳床は60年以上は前のもの。
何度か修繕時の口ゴザが入っていますが、
それでも縁際が沈んでいます。
しかし昔の職人さんは、ちゃんと口ゴザを入れています。

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畳の仕事を始めた頃は、こういう畳を見ると
「面倒だなぁ、新畳の仕事がしたい」と感じました。
しかし最近の建材畳床に中国産の畳表を付ける新畳など、
誰が作ってもほぼ同じものができます。
技術的にはパートの方でも十分間に合います。
だから機械を導入して、異業種がビジネスとして参入して来る。
しかしこういう古い畳になると、それなりの経験がないと
どこをどうやって修繕するのか
分からないと思います。

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自分が最初面倒くさいと感じただけに、
こらからの若い畳店の方にも
「物が蘇る素晴らしさ」
そして
「古き良きものへのリスペクト」

これを継承していってもらいたいものです。

そんな事を言うのはまだ早い!ですかねー
何と言っても「人生100年時代」ですから。

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