FC2ブログ
2月下旬に愛知県で第31回技能グランプリが開かれました。
会場はセントレア空港の向かいの愛知県国際展示場。
通りすがった国際線のカウンターには人影がありません。
こういう場所に来ると、改めてコロナ禍の現実が迫ってきます。

20210406000425bf7.jpeg

2年に1度開かれる技能グランプリは、
厚生労働省所管の中央職業能力開発協会が主催。
選手の年齢制限がなく、ズバリ日本一の畳職人を決める競技会です。

20210406000352ffa.jpeg

その運営を全日本畳事業協同組合が行なっている関係で
過去3回私も運営に携わってきましたが、今回は初めて
競技委員として加わる事になりました。
委員は6名で、競技日当日はもちろん、翌日も1日かかって
全ての選手の製作した畳をチェックします。
準備も含め4日間、緊急事態宣言下のためホテルで缶詰めでした。
4日間、全ての食事が弁当だったのは辛かったです。

202104060005489b3.jpeg

選手を見ている所を、実は私が見られているという図。↓
京都の(株)嵯峨藤本畳店の藤本さんは、畳職人の世界の
ジャック・ニクラウスのような存在、と私は思います。
パットが外れたら、それはカップが動いたからだと
TV解説者に真顔でそう言わしめるほどの名選手。
ボストン美術館の茶室や京都迎賓館、裏千家今日庵など、
多くの希少建造物の畳を手掛けられた、雲の上の存在の人です。
畳一筋、古風に見えても温故知新、コスパには拘るユーモア溢れるお方。
あまり書くと叱られますので。。
今まで色々と、私のような青二才を黙って応援してくれました。

とにかく競技委員の方々、手縫い畳製作にむちゃくちゃ詳しい。
というか、好きなんですね、昔ながらの伝統工法で畳を作るのが。
畳漬けの4日間、皆さんとご一緒させて頂き大変勉強になりました。

2021040600045236b.jpeg


文化・文政期頃に建造された旧家の茶室と支度間の畳です。

20210401005042da1.jpeg

時代が滲むニ畳台目中板下座床。
狭すぎず広すぎず、小間の王道です。
使用する畳の材料はすべて現状考えられる最高の素材。
納期を要する手配材料のため、ミスの許されない仕事です。
8畳製作するのに10日を要しました。

20210401005106a71.jpeg

思えば私の代になるや否や、畳を新調するタイミングに。
この旧家での過去70枚近い最高素材を使った新畳の製作は
私の畳職としての何よりの試練・経験・自信となりました。
しかし「このやり方で良いのだろうか?」と
不安に思った事も何度かありましたが、
先代はいないし、如何せん聞ける畳屋さんが周りにいません。
そんな時、
上田宗箇流や裏千家お家元出入りの先輩畳師など、
数少ない手縫い畳製作のレジェンドの方々から
弟子でもないのに多くの事を教えて頂きました。
教えて頂いたというよりも上手く聞き出したんですが。。
本当に感謝しています。
聞くと皆さんも同じ事にぶつかり、様々な裏技でそれらを
乗り越えておられました。
一旦話し出すと1時間2時間はあっという間。
同じ経験をした者同士にしか分からない
なかなか細かくマニアックな話。
知らぬ間に製作技術のレベルが高くなって行きました。
畳に本物も偽物もありませんが、この畳は明らかに「別物」です。

20210401005209185.jpeg

思えば8年前に遡ります。
いくら当店が創業200年の老舗であるとは言え、
何の実績もない後継ぎの一職人に「頼むよ」と一言。
そう仰って頂いた当代御当主に私は育てて頂きました。
何とか、素材負けしない畳を作れるようになり
少しは恩返しができたのではないかと思います。
これからも精進しなければと、心新たな気持ちです。

202104010052278dc.jpeg
使用畳表: 備後地草六配中継表
使用畳床: 東播州産稲藁床棕櫚裏付
使用畳縁: 本高宮藍染麻布縁
框: 檜板入れ仕様

茶道の先生をされているお客様からのご依頼で
表替えをさせて頂きました。
寸法が大きい畳や全体的に広めの隙間が生じており、
畳が間違って敷かれているような感じでした。
お聞きしてみると、案の定
最初は床の間の前に長手の2枚が敷かれていて、
その後炉を切る事になり、その2枚を反対側に敷く必要が。
以前に依頼した畳屋さん(現在は廃業)が畳の寸法は変える事なく
他の4枚も床の間の方にスライドして寄せたとの事でした。
上手く簡易的にとりあえず間に合わせたアイデアだと思います。

ただ部屋が長方形なら平行移動も可能ですが、部屋の大半は台形。
畳は決められた場所でないと収まりません。
今回の場合、ただ視覚的に畳の隙間を埋めるだけでは
全畳が部屋の歪に合っていないため、小手先の修繕に終わります。

20210309003450416.jpeg

せっかくの表替え、青畳になってもバラバラ感が残っては...
となれば、炉を基準に、新畳製作と同じ採寸を行い
それぞれの畳をその寸法通りにリメイクするしかありません。
こうなると表替えの域を逸脱してしまい
下手をすれば新畳製作以上の手間がかかりますが、
「お茶の部屋やから、やったるでー」
お茶の稽古は、パシッとした畳の上でして頂きたい。
自ずと気持ちも引き締まるはずです。

20210309003539214.jpeg
使用畳表: 熊本県産涼風 使用畳縁: 純綿双糸

というわけで、縁際の下りや畳の厚みも矯正し、
新畳製作同様に畳を敷き詰める事ができました。

20210309003524b92.jpeg

写真を撮る際に、先生がわざわざ霰の真形釜を掛けてくださり
床には「弄花香満衣」(花をろうすればかおりころもにみつ)
の軸も掛けて頂きました。
これは自分の稽古の時にも何度も目にしている一行で、
前の句「掬水月在手」も含めて有名な禅語です。
先生とも茶道の話が弾み、とても嬉しいひと時でした。
ありがとうございました。

202103090035526f8.jpeg

2021.02.28 縁なし畳_101
部屋のリフォームにより、微妙に畳のサイズが
足らなくなり、1列4枚を新調しました。

2021022800102302f.jpeg

既設畳は当店が製作したものではありませんが、
イグサではなく化学表のため色変わりもなく、
同じ畳を製作する事ができました。

202102280010375a3.jpeg
使用畳表: セキスイ美草

昨年畳を新調させて頂きました江戸期の町屋家屋ですが、
敷居の低い箇所がいくつかあり、畳と段差が生じていました。
襖が外れないので畳を3枚手直しさせて頂きました。

框板の脇に置いた備後中継ぎ表からむしったヒゲは、
このように見事に畳と一体化して馴染んでいました。
しかし全て外さなければなりません。

202102102220378d5.jpeg

段差は約5ミリ。
板の縫い糸を締めればかなり厚みは薄くなるのですが、
そこからまた5ミリはさすがにキツイので、少し藁を抜きます。
当然、抜けば床糸が緩みますので、裏側から締め直します。

20210210222124b6e.jpeg

最近の建材床などは使用している内に凹んで薄くもなりますが、
さすがに板をガンガンに締めた框は、まず沈むことはありません。

20210210222203674.jpeg

化粧ばえと呼ばれる最表面の藁を少し抜いただけでも結構な量。

20210210222222ae7.jpeg

再び板を縫い付けて締めて終了です。
こういう畳は何をするにも手間がかかりますが、
やっていて本当にテンションが上がります。
寒いこの時期ですが、手縫いの感覚が戻ってきました。
折下来週の2月19日から4日間、畳職人日本一を競う
第31回技能グランプリが愛知県国際展示場で開催されます。
今年は無観客開催という事で少し寂しいかもしれませんが。
競技委員を仰せつかりましたが、自分が競技に参加する気持ちで
日本一の技をしっかりと見てきたいと思っています。

20210210222251afa.jpeg